人材育成IT化計画
株式会社レビックグローバル
代表取締役社長 川口泰司
昨年から顕著になり始めた傾向であるが、中国におけるローカル人材の教育が活発に成りだしている。背景事情としては、日系企業においても現地化が急務となってきたことが理由として挙げられよう。ここには2つの大きな要因があると考えられる。
ひとつは中国という地域が、従来の生産拠点から市場としての位置づけに移行し始めたことによって、中国国内でのマーケティングなど、製品販売のための市場開発が必要となっており、ホワイトカラー戦力としてのローカル人材が必要になってきていること。ふたつ目は世界経済のグローバル化により、日本企業の活動エリアが広がったこととや、生産拠点の第三国への移転によって、駐在員をいつまでも中国に置いておくことが出来なくなり、ローカルスタッフへの大幅な権限委譲を進めなければならなくなったことが挙げられる。
しかし、これまであまり教育という観点で人材開発を行ってこなかった日系企業にとっては、どういった手法が有効であるか、といったノウハウが全く蓄積しておらず、教育は実施しなければならないのだがなかなか進められない、という現実もある。
また、人材開発そのものを本社からの支援もなく現地任せにしているケースも多く見られ、日本国内ですら人事や教育担当の経験を持っていない現地駐在員が、右も左もわからないままベンダー任せで教育を行っている気になる、という状態に陥ってしまう、といったケースもある。こういった反省からか、ここ最近の傾向として、現地の人事部長や教育担当に中国人を指名して任せてしまう、というパターンも増えてきている。
このように中国人主導で教育プログラムを考えていく状況が生まれつつある中で、ちょっと面白い傾向が出てきている。中国におけるローカルスタッフの教育研修の手法としては、日本と同じく集合研修が一般的であるといっていいのだが、中国人人事部長の発想としては、eラーニングなども積極的に取り入れたい、という志向が強い。もともと集合研修すら実施していなかったケースがほとんどなので、集合研修の進め方や内容にも強い関心を持っているのだが、そんな中でeラーニングに強い興味を持つ理由がいくつかある。
ひとつは、中国における米国系企業や韓国系企業が積極的にeラーニングを取り入れているのに対し、日系企業ではほとんど導入されておらず、ここでeラーニングを取り入れることは会社そのものが先進的なイメージを持つことにつながる、との発想。ふたつ目は、集合研修では物理的時間的に無理が生まれる、と言う中国ならではの国土の広さに起因する事情。そしてなによりも、新しい物好きという中国人の国民性みたいなもの。日本人駐在員は一般的にeラーニングに対して前向きでない傾向が強いので、この対比は単純に面白い。
ちなみに日本人が否定的である理由としては、「過去、日本でeラーニングを受けたことがあるが、効果が疑問である」、「中国のインフラが不安」、「日本でも社内教育としてeラーニングを積極導入していないのに中国だけやるわけにはいかない」など、かなり保守的な意見が多いことを付記しておく。
このように、中国での教育研修が実施されるにあたり、現状ではいくつかの考え方が混在している状態ではあるが、長い目で見ればやはり効率の面から言ってもeラーニングは日本以上に普及する可能性をもっていると思われる。特に日本のほうでも現在、eラーニングブームの様相を呈し始めていることもあり、このことが後押しになる可能性は高いだろう。
しかし、ビジネス的に見ると問題がないわけではない。eラーニングは個人学習が基本であり、個人の学習進捗に合わせてテストを実施するなど、あくまでも個人用のツールである。ところが中国ではこのあたりのベンダー側の意図とは別に、ひとつのIDを複数人で使いまわして学習する、場合によっては画面をプロジェクタに映して共同学習する、などの使い方が想定されるのである。これはベンダーからすると防御策もなく、また違法と主張する根拠も乏しく、なんともやるせない状況であり、日本市場とは異なった販売モデルを考案する必要が出てくる。
こういったいくつかの課題を抱えている状況ではあるが、中国における企業内教育市場は確実に成長の兆しであり、中でもeラーニングは期待値の高いサービスであることは動かしようのない事実である。これまで日本企業として、海外での社員教育、特にホワイトカラー以上の高級人材の教育に、本格的に取り組んできた例がどの企業もほとんどないと思われるが、中国市場での人材育成の成否が、今後の新興国におけるローカルスタッフ教育に大きな影響を及ぼすであろうことは想像に難くなく、こういった新しい取組みであるからこそ、今後は受益企業とベンダーとの共同による教育モデルの開発などが重要になると思う。
中国ビジネスを勝ち続けるための現地化推進・幹部育成のためのeラーニングサービス

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川口泰司 |株式会社レビックグローバル 代表取締役社長
大手化学会社、コンパック、アップルコンピュータを経て、1997年フロムビッツを設立。インターネットマーケティングに関するコンサルティングを中心に活動。1999年に1999Webデザインアワード(Webデザインコンソーシアム主催)にて、審査員特別賞受賞。2001年デイツーイーツー株式会社代表取締役社長、2003年株式会社レビック代表取締役社長を歴任し、2005年株式会社レビックグローバル代表取締役社長に就任。「人づくり」に貢献する教材コンテンツとプラットホームの開発に情熱を燃やしている。




