人材育成IT化計画
株式会社レビックグローバル
代表取締役社長 川口泰司
企業内教育でeラーニングを導入する場合に、最も手軽な方法はSaaS型(サースと発音します)のサービスを利用することである。SaaSは最近よく目にするようになった言葉だが、事業者がサーバ上のアプリケーション(ソフトウェア)を従量課金方式などで期間貸しするサービスのことを指す。もともとは厳密に言うとASPとは違う概念だが、最近ではASPベンダーがSaaSと言ったり、なんとなく新しい言葉のほうがカッコいいイメージがあって、両者の区別なく使われる傾向にあるようだ。
SaaSの利点は、初期コストや運用コストが安くすむことと、サービス立ち上げまでの期間が短いので必要なときにすぐに始められること、また、同様にいつでもやめることが出来ることにある。最近では、コンプライアンス教育やCSR教育など、全社一斉に教育をする必要性に迫られたときに、スポット的に利用されるケースが増えている。
このSaaSに対しもうひとつのeラーニングの導入形態として、自社専用のシステムを構築する方法がある。SaaSが共同住宅だとすれば、専用システムは一戸建てのイメージだが、セキュリティ面を考慮してイントラネット上に構築されるケースがほとんどである。こうした専用システムの場合はサーバの購入からソフトウェアのライセンス購入、市販コンテンツのライセンス購入など、初期段階で必要になる費用が大きく、また、システムの保守運用面でもランニングコストが発生する。したがって、ある程度のスケールが見込めなければ、採算が合いにくい面がある。(この場合、教育の費用対効果をどう測定するか、という点が課題になる。)そのため単にeラーニングを導入するだけのために自社システムを立ち上げるケースは、これまでは一部の大企業に限られていたのが実状である。
しかしここ最近の傾向として、自社システムを立ち上げる企業が増えてきたようである。では、その狙いはいったいどのようなところにあるのだろうか?
実は自社システムを導入する企業にとって、専用システム構築には大きく分けて2つの意味がある。ひとつめは教育そのものの浸透と効率化を目的とするeラーニングの導入だが、もうひとつは「スキル管理・キャリア管理」を目的事項としているのである。eラーニングは教育プログラムを配信し、学習進捗管理と成績管理を行うものだが、eラーニングだけでなく集合研修や自己啓発も含めた教育実施の履歴をもとに、スキルやキャリアの管理を行うことへのニーズが高まりつつあるのだ。そして、最近のLMSは単純なeラーニングのシステムというよりも、こういった人材育成管理機能を高めた統合タイプが主流になってきている。人材育成が会社経営の重要課題になり、人事異動や昇格昇進に伴ってタイムリーに教育を実施する必要性がますます増大しているわけだが、さらにスキルやキャリア管理まで行う場合には、社内の人事システム(データ)との連動が必須になる。そして、このような人事と人材育成に関する統合的なシステムの導入を考えた場合、SaaSでは限界があり、自社システムを採用することが避けられなくなるのである。また、こうした人的資源の統合管理は、たとえ初期コストをかけたとしても、長い目で見れば経営の効率性が高まるなどの費用対効果があげられるということにもなる。
このようにeラーニングの導入といっても、目的のウェイトをどこに置くかによって選択肢が出てくるし、SaaSの利用、自社システムの導入それぞれにメリット、デメリットがある。市場としてはどちらも伸びているわけだが、eラーニングの導入の際には、教育研修全体のプログラムをどう考え、何を管理項目として捉え、自社にとって何が重要であるかをしっかりと考えることが重要である。その際、人材育成を投資と考えるかどうかの経営判断も重要となる。システムもサービスも進化する中、選択の幅が広がってきたことはいいことだが、その結果、人材開発担当者としては目的意識をしっかりと持って判断することが必要になっているのである。
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川口泰司 |株式会社レビックグローバル 代表取締役社長
大手化学会社、コンパック、アップルコンピュータを経て、1997年フロムビッツを設立。インターネットマーケティングに関するコンサルティングを中心に活動。1999年に1999Webデザインアワード(Webデザインコンソーシアム主催)にて、審査員特別賞受賞。2001年デイツーイーツー株式会社代表取締役社長、2003年株式会社レビック代表取締役社長を歴任し、2005年株式会社レビックグローバル代表取締役社長に就任。「人づくり」に貢献する教材コンテンツとプラットホームの開発に情熱を燃やしている。




