CASE 02現場の社員教育
ITコンサルティング
組織環境の変化に対応した現場の育成
株式会社日本総合研究所 社長室(人事)部長代理チームリーダー 彼谷浩一郎様
2007.09.14 Update
今回、組織環境の変化を、社員育成の面からはどのように捉え、活かしたのか、人材育成のチームリーダーである彼谷様にお話を伺いました。
Q1.今回の分社化・組織改革で、現場の社員育成をどのように変革しようとお考えでしょうか。
「人」を中心においたマネジメント
分社化と組織改革により体制を大きく変更しました。そのひとつが人事部という部署名を廃止して社長室に統合すると同時に、人事部の多くの機能を現場に移したことです。これに伴い人材育成機能を各部署に移管することによって、各部署が、現場に即した人材育成を行う体制にしました。そして、各部署のマネジャーには、マネジメントのパラダイムの再構築を求めました。
即ち、従来の自部門の業績を達成することだけではなく、「仕事を通してメンバーを育てる」「将来に向けてチームを改革する」といった「人」を軸にした「ピープルマネジメント」の達成も新たに求めることにしました。この新しいミッションについては、組織のアライメント、エンパワーメント、育成管理、目標管理、動機付け、コーチング、チームワークの7つの行動を定義し、各部署のマネジャー層へのトレーニング計画に反映しています。
イチゴの繁殖活動にこれからの人材育成のヒントが
イチゴの繁殖の仕方には二通りの方法があることをご存知ですか。
一つはつる。親イチゴからつるが生えて、直接その場で増殖する。もう一つは種。イチゴの実を食べた鳥を介在して遠く離れた場所で繁殖する。ここにすごい仕組みがあります。
つるで増殖する子イチゴのDNAは、親イチゴと全く同じ。だから寒い地なら寒さに強いイチゴ、湿気の多い地なら湿気に強いイチゴがそこで増え続ける。一方の種は違います。一つのイチゴの実についている種はすべてDNAが異なる。暖かい地に強いDNA、雨の多い地に強いDNAなど。だから、環境が異なる場所に運ばれても、その地に適応するDNAを持つ種が育ち、そこで繁殖を始めます。
企業での人材育成で言うならば、日本企業はこれまでつるを大きく伸ばすことで成長してきました。人事部が主導し、同じ研修プログラムで同じDNAを持つ人材育成を図ってきました。つまり“つる型”です。こうして育った人材ももちろん企業には大切ですが、こればかりだと新しい環境や時代に対して柔軟に対応できなくなります。変化の激しい時代だからこそ、今やらなければならないのは、違うDNAを持つ“種”、即ち新しい考え方や仕事のやり方を生み出せる人材を育てていくことではないでしょうか。「ピープルマネジメント」という新しいマネジメント方法にはこうした狙いもあります。
Q2.新しいDNAを生み出すためには、何が必要だとお考えでしょうか?
社内に「変化」をおこす
安定期に入った企業ではこういう差異を持つDNAが生まれにくい気がします。たとえ外部環境の変化が激しくても、つるを育て続けることである程度組織は存続できるからです。そして気が付いた時には、環境の変化に取り残された恐竜のようになってしまうかもしれません。ですから、自ら積極的に社内に対して「変化」を起こすことが必要なのだと思います。
ここでいう「変化」とは、例えば人事異動や担当変えなどといった類のものではなく、パラダイムを変えてしまうようなものでなくてはいけません。そのような「変化」により、新しいDNAを生み出す可能性がでてきます。今回の我が社の分社化および組織改革の狙いのひとつに、組織に「変化」をおこすことがあげられると私は考えています。
変化をチャンスと捉える姿勢が重要
いくら変化を仕掛けたからといっても、社員に変わろうとする意識がなければ、逆効果になってしまいます。例えば、大きなノルマを掲げられた時に、いままでと同じ考え、同じ方法で乗り越えたのでは、新しいDNAは生まれません。
リーダーに求められるのは、変化をチャンスだと捉え、新しい考え方や新しい方法でこの状況はブレークスルーできるんだという姿勢をメンバーに示すこと。その姿勢がメンバーを動かし、一緒にやっていこうとする勢いやモチベーションが醸成され、もがいたり何か新しいことを考えたりする過程で、新しいDNAが生まれていくのだと思います。
Q3.分社化と組織改革が、社員にどのような影響をもたらしていますか?
現場が主役の人材育成が芽生えて欲しい
組織改革が行われてまだ数ヶ月しか経っていないので、社員一人ひとりの変化はまだ見て取れませんが、少なくとも私が所属する社長室(旧人事部)では大きな変化が起こっています。いままで人事部中心で企画を進め、業務プロセスも確立してきましたが、各部署に人材育成を担当するチームが出来たことで、従来のやり方、制度に対し、いろいろな意見が寄せられ、組織を超えた活発なディスカッションが行われるようになりました。それに影響され今まで考えもつかなかった新しい研修制度を創造していこうという大きなパワーが生まれています。こういったことが他の組織でも次々に起こっていくといいですね。
少し話は変わりますが、今年から人事以外のメンバーも採用面接に参加してもらっています。それは、自分の部署に来てほしい人材を採るためではなく、同じ会社の中で仲間として一緒に働けるかを判断してもらうためだったのですが、感想を聞いてみると、「採用活動をすると会社をもっと良くしたいと思うね。」「学生と話すと、むしろ自分のやる気がわいてきた。」などの意見がありました。社員一人ひとりがこのようなことを肌で感じることで、人を育てる主役は会社でも人事部でもなく自分たちなのだと気づいてもらいたいと私は考えています。
本当は、それぞれの職場で人を育て、個々人の多様性を活かせるようになれば、それだけで多様で強いDNAが生まれ始めると思います。ただ、仕事の中で人を育てると言っても、それは簡単なことではありません。ですから、全てを職場任せにするのではなく、私たち人事担当も最低限の基盤は整えていくつもりです。それがeラーニングや参考図書やセミナーなど人材育成をサポートするメニューや制度です。これらはイチゴの種を育てるための土壌に含まれる栄養素と同じ働きをしているのかもしれませんね。

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